阪急電車の非常ボタン

6月13日。9時11分の電車が出た後だったので、おそらく9時12分頃のこと。
阪急三宮駅の梅田方面行きホームを歩いていると、前方の階段を目が不自由と思しき男性が上って来た。階段を上りきると、線路のほうに向きを変えた。そして、二、三歩進んで……危ないと思った瞬間、目の前で点字ブロックを越え、そのまま線路に転落した。
その線路には数分も待たずに9時14分着の折り返し梅田行きが入って来ることになっている。私は一瞬、助けに飛び降りるべきか迷ったが、近くに非常ボタンがあるのが目に入り、すぐにボタンを押した。本当の正解は「大声で周りの人に知らせる」だったんじゃないかと後から思ったが、その時はそこまで頭が回らなかった。ただ、一刻も早く電車を止めようと、力いっぱいボタンを押した。ところが、何度押しても何の反応も無い。さすがに心配になってきて振り返ると、ホーム上にいた数人が飛び降りて、助け出そうとしているところだった。私はただボタンを押しながら祈ることしか出来なかった。
間もなく、男性が引っ張り上げられた。そして全員がホームに上がった直後、いつもの通り、特に徐行する様子も無く電車が入線して来た。駅員が駆けつけたのは、すべてが終わった後だった。その男性は既に入って来た電車に乗り込んでいた。私は9時15分発の電車に乗ってその場を離れた。
結局、非常ボタンが働いたのかどうかはよく分からなかった。駅員も誰かが呼びに行ったのかもしれない。せめて警報音が鳴るとかすれば、周囲に異変を知らせることぐらいはできると思うのだが。以前JRの駅で非常ボタンが押されたところに居合わせた時は、確か警報音が鳴って回転灯が回っていたと思う。鉄道会社によってかなり違いがあるものなのだろうか。